菜々が泳ぎだした。

 犬かきみたいだ…少しずつゆっくり進んでる。
 

 菜々が泳げるかテストする。って言ったけど、菜々が泳げようが泳げまいがどっちでもいい。

 ただ…菜々に触れたいだけなんだ。

 ただの口実だな。

 俺って強がりなのかな?


「菜々!あと少し!!」


 あと3メートル!!


「グッ…ッウッ……」


 立っちゃった…

 10メートル泳げなかった…


「うぅ~。先生…泳げなかった…」


 先生が近くに寄ってきてくれた。


「あと少しだったのにな!」


「…菜々?どうした?そんな顔して!」


 菜々が悲しそうに俺を見る。

 ちょっと本当に泣き出しそうだ。

「菜々?大丈夫か?水飲んだのか?怖かったのか?俺に言ってみな。」

 ちょっと無理させたか?

 泳げないって言うの無理やり泳がせたから…

「菜々、ごめんな。俺が無理やり泳がせたから。」


 ううん。っと顔を横に振る。

 先生に誤解されたくない。

 先生のせいじゃないもん。


 泳げなかった自分に腹が立つんだ。

 いつも先生に迷惑かけちゃって…。