「菅原、お前も練習しろよ。」

 莉子ちゃんに聞こえないくらいの声の大きさであたしに言った。


「えっ…無理ですよ…。」

「いいから。莉子ちゃんのお手本になってくれよ!」


 何で、あたしまで…。

 教えに来たんじゃないの…!?

 教えられてないんだけど…。

「先生…努力したら泳げるようになると思いますか?このあたしが!!」

「…しらん!」

 無責任な…!!

「せ、先生!!出来ないもん!!」

 出来る訳ないもん。

 17年間泳げなかったあたしが…。

「なぁ、菅原は、どの位泳げるんだ?」

 どの位って言われても…全然泳げないんですよ…。

「全然泳げません。5メートル行けば良い方です。」


 先生が信じられないような顔であたしを見る。

 呆れ顔だ。


 …だって5メートルいけば良い方だもん!!

 息つぎが出来ないんだもん!!

 タイミングが分からないと言うか…顔が上げられないと言うか…。息つぎする時上手く出来ないから水飲んじゃうし!!


「菜々ちゃん。10メートル泳げるようになったらチュウしてやる。」


 ……せ、先生!!なんて事を言うの!!
近くに莉子ちゃんが居るって言うのに…小さい声だからって!!

 先生はイキイキした顔してるし。


 本当にもうッ!聞こえたらどうするの!!


 恥ずかしいし…顔が熱い。…もうッ!先生のせいだ!!


 先生が…キ…キ、キス何て言うから!!!