「お前が、嫌いになったから。」
そう言った。
ペタンと座り込む椎乃。
「じゃーな、明日からは"友達"だ。」
冷たく言い放つ。
じゃあな、椎名。
嫌いなんて嘘。
本当は、誰よりも愛してる。
「こ、うっ…」
椎乃に背を向けて歩きだす。
「こぅううっっ!!!!」
後ろから椎乃の声が聞こえる。
グッと唇を噛んで涙をこらえる。
『ぶっ、本当椎乃は食べ物がすきだな!』
『うん!だーいすきっ!』
美味しそうにかき氷を頬張ってる椎乃。
『ふふっ、当たり前じゃんか。私が洸を支えるからねっ。!』
いつも俺の隣にいて、いつも俺を支えてくれた椎乃。
『ダサくなんか、ないよっ…。泣いていいんだよっ、よかったっ…本当、お疲れ様っ…!』
俺のために泣いてくれて
『おめでとうっ…!』
俺のために笑ってくれた。
そして…
『大好き。』
『私、洸しか好きじゃないから。』
だれよりも俺を愛してくれた。
「くっ……」
自分から言ったのにな。
目を閉じればすぐに
椎乃の笑った顔が、
泣いた顔が、
照れた顔が、
怒ってる顔が
浮かんでくる。
でももう見れないんだな。
ごめん、椎乃。
あと…
じゃあな、椎乃ーーー。
〜洸side end〜
フラフラとした足取りで家に帰る。
誰もいない家が余計寂しさを与えてくる。
「うぅっ…うわぁあああああっっ!!!」
洸、どうして…
ついさっき洸に取ってもらったうさぎさんを抱きしめる。
なんで、なんでっ…
「うぅっ…ふぅっ…なんっ、でっ…」
あんなに一生懸命取ってくれたのに、
ギュッて抱きしめてくれたのに。
「どうし、てっ……」
わかんない、わかんないよ…
「おはようっ…!」
1人での登校。
あれ、こんなに寂しかったっけ…?
いやちがう、毎朝が幸せすぎたんだ…。
「おはよー!どした?なんか元気ないじゃん。」
「ゆりちゃん…」
本当、なんでもお見通しだね。
「あの、ね…、別れたの、洸、とっ…」
またボロボロと涙が溢れる。
私、どれだけ洸のこと好きなの…。
「はっ……………!?」
「グズッ…」
「ちょっ、授業サボるよ。」
「う、んっ…」
ゆりちゃんに手を引かれ教室を出る。
廊下で優とすれ違った。
優は驚いた顔でこっちを見てたけど、
私はそのまま横を通り過ぎた。
「まず、なにがあったの…?」
ゆりちゃんは私の背中をさすりながら問いかける。
「…あのっね……」
私は昨日の事をゆりちゃんに全部話した。
話を聞いたゆりちゃんは驚いた顔をしていたけど、すぐに考え込んだ。
「本当、突然だね…。」
ゆりちゃんがポツリと呟く。
「う、ん……」
「きっと…日向くんも悩んで決めたんじゃないかな…。」
「そう、かな…?」
嫌いって言われたんだよ…。
「もう一回、話してみたら?」
無理に決まってる…。
「ごめっ…それだ、けはっ…うぅっ…」
話す事なんて、しばらく無理だよ。
ーー私の心に、大きな大きな穴が空いた気がした
教室に戻るとみんなが心配して声をかけてくれた。
でも、洸だけは席に座ったままだった。
「…洸………。」
「ん?なんかいった?」
「あ、ううん!なんもないよっ!みんな心配してくれてありがとうっ!」
私、洸のこときっと嫌いになれない。
どうすればいいのかな?
そのあとずっと考えたけど、答えなんか出なかった。
あの日から1週間が経った。
洸とはあれから喋ってない。
私はなんとか忘れようと努力してるところ。
もう泣いたりはしてないけどね。
「椎乃、呼んでる。」
ゆりちゃんが廊下の方を指差して言ってきた。
「へ…?」
チラッとみるとそこには優の姿があった。
ん?どーしたんだろ…?
優のところに急いで行く。
「優?どーしたの?」
私が問いかけると優はふぅ、と息をついた。
「よかった…」
「…へ?」
なにがよかったんだろう?
「いや、前泣いてたじゃん?だから心配でさ。何回か教室来たんだけど椎乃いつもいなかったから。でもよかった、元気そうで。」
優はニコッと笑って私の頭を撫でた。
「ありがとうっ…!もう大丈夫!心配かけてごめんね!」
優はやっぱり、優しいな。
優だけに…だね!
えへへ
そのあと少し話して教室に戻った。
洸の方をみると洸もコッチを見てたみたいで目があった。
うっ……
どうすればいいんだろ…。
なんて考えてると洸はフイッと顔を背けた。
「っ……」
やっぱり、傷つくな。
でもこんな風にネチネチしてたらもっと嫌われちゃう。
バシッと頰を叩く。
弱気になるな、私…!!!