私の好きな人 〜キミと生きた時間〜



「ううん、なんもないよっ…!」


ニコッと笑って言う。


「じゃあなんで、泣いてるの?」



えっ…。



そっと頬を触ると濡れていた。



「…うぅっ……。」


ボロボロと涙が溢れてくる。



さっきたくさん泣いたのに…。



ギュッー


「へっ…。」


突然優に抱きしめられた。



「何も聞かないから、泣いていいよ。」



そう言われた瞬間、私の中で何かが切れてわんわんと子供のように泣いた。







「ん、落ち着いた?」


「うん…ありがと。」



泣きすぎてもう疲れた。



私は抱きしめられた状態のまま、優の腕の中で眠りに落ちた。







「んー!」


ぐーっと伸びをする。



ん?



がばっ!!


「え、なんで家にいるの…。」



気づけばもう朝。



あれ、私昨日保健室にいたよね…?





そんなことを思いながらリビングに行く。



今日はちょうど休日だから学校がない。




お母さんに昨日のことを聞くと、



「あー、イケメンな子があなたをここまで運んできてくれたのよ。」



うふふー!と笑いながらいった。




なななっ!?



じゃあやっぱり、優が!?




うわぁあ!

申し訳ないよ…!



月曜日お礼いわなきゃっ!




起きたら病院のベッドの上。


あ、そーだ、倒れたんだ俺。



最近体の調子がよくなかった。



でもただの熱だと思ってた。


だからほっといたんだけどな…。



まさかこんなことになるなんて。



ははっ、と1人笑う。





ガラッとドアが開いて母さんと医者が入ってきた。



「あ、洸起きたのね。」


目を真っ赤にして母さんが言う。



ドクン、と心臓がなる。


嫌な予感しかしなかった。




先生が俺の隣に座る。





「洸くん、よく聞いて。ガンがね、肺に転移してたんだ。」



……………………



………は……?



「ははっ、なんの冗談っすか先生。やめてくださいよ。」



ちがう、冗談なんかじゃないって分かってるのに、




認めたくないんだよっ…。



「冗談なんかじゃない。君は…」

「俺はっ…!…死ぬんですか…?」



怖い、この質問の答えを聞くのがー。



「ああ。もって、1年だ。」



ははっ、なんだよそれ。



俺、病気に勝ったじゃねえかよ。



なんでまた、なんでっ…。




「すんません。」


そう言って病室を出た。







俺、死ぬのか…。



頭に出てくるのは椎乃の顔だった。



椎乃には何て言えばいいんだよ…。




1年…か。



来年のクリスマス、一緒に過ごすこと出来んのかな?



怖い。

死ぬのが…

椎乃と過ごせなくなる事が…





「怖いんだよっ…」







〜洸side end〜


コンコンーー


「洸ー…?」


洸のいる病室の扉をあける。



「あ、椎乃ちゃんっ…!」


中には洸のお母さんしかいなかった。



「あの…洸は、?」


私がそう聞くと洸のお母さんは黙り込んだ。




…えっ…?

なんか、あったの…?



そう思うといてもたってもいられなくて、




私は病室を飛び出した。





洸がいそうなところ…



バンっー


屋上の扉を勢いよく開ける。



「椎乃…」


はぁっ…いた…。



洸のいるところまで走る。



「ふぅー…、どうしたの?」



息を整えて聞く。



怖い。


なんて答えが来るのか。

でも、聞かなきゃ。



私が洸を支えるんだから。