裏庭に来た僕と速水くんは人に目立たない所に座っていた。
そして、速水くんは僕の作ったクッキーを頬張っていた。
(悪態をつくわりには、甘党って、可愛いけど……。こんなこと言ったら、怒られるんだろうなぁ。)
僕と速水くん。
一見、何の繋がりもない二人が、料理を通じて、繋がっていたのだった。
その外見からは想像もつかない甘党の速水くんは、僕の噂を聞きつけたのか、初めて一人でいた僕の前に現れ、
「お菓子、作ったら、食わしてくれないか?」
って、開口一番、そう言った。
それから、こうして、放課後になると、僕のお菓子目当てに呼び出しては、二人っきりで過ごすことが多くなった。
だけど、お菓子目当てだけじゃなく、僕にもかまうようになった。
「お前、今、好きな奴いるだろ?」
「えっ!?…な…何で!?」
速水くんはかなり鋭い。
「お前ら兄妹は丸わかりなんだよ。優木寧々は冴樹のことが好きなんだろ?」
「…そ…それは、寧々ちゃんのプライバシーだから言えないよ。」
僕はそう誤魔化したのだが、
「お前、誤魔化すの下手くそだな。」
「ちなみにお前が好きなのは、柊木つかさだろ?」
「!?」
「やっぱりな。最近、柊木の方をボォ~ッと見てるし。」
速水くんはしたり顔で、僕の方を見る。
「速水くん!お願い!その事は誰にも言わないで!」
僕は必死で速水くんに懇願した。
「優木寧々や冴樹にも?」
と、速水くんはそう聞いてきた。
「うん!寧々ちゃんや佑宇真くんにも!お願い!」
そう言った途端、速水くんはニヤリと不敵に笑って、
「じゃあ、俺の頼み事、聞いてくれるよな?」
もう僕は頷くしかなかった。

「や~ん、冴樹くん、カッコいい!!」
「佑宇真く~ん!!」
キャ~ッという黄色い声援の中、佑宇真は弓道をしていた。
袴姿がまたカッコいい。
オレはその女子たちの一番後ろで、 見ていた が、何か面白くなくなり、その場を離れた。
佑宇真と待ち合わせ場所にしている、学校の図書館にいた。
放課後、弓道部の部活が終わった佑宇真とはだいたい一緒に帰っている。
少しでも佑宇真と一緒にいられるのは嬉しい。
「寧々、お待たせ。待ったか?」
そう言ってる間に佑宇真がやってきた。
「ちょっとだけ待った。」
「それは悪かったよ。帰りに牛丼おごるから。」
「よし、分かった!大盛り、つゆだくで。」
オレが笑顔でそう言うと、佑宇真はフッと笑った。
「何だよ。笑って。」
「いや、何か、寧々、少し機嫌悪いかと思ったんだけど、食欲で機嫌直るんだなって。」
再び、クスクスと笑い出した。
「何だよ。笑うことないだろ?」
「悪い、悪い。」
そう言い合いながら、楽しくオレと佑宇真は帰って行ったのだった。