僕が速水くんと両想いになる、数週間前。
「佑宇真、違う違う。そっちは弦の部屋。」
オレは、退院してきた佑宇真に、家のあちこちを教えていた。
弦というのは佑宇真の弟だ。
中学生だが、生意気なヤツだ。
「ここが佑宇真の部屋だよ。」
そう言って、佑宇真を部屋に招き入れた。
佑宇真の部屋は整理整頓されていて、いつもキレイだ。
「…ここが、俺の部屋……。」
佑宇真は呟くようにそう言うと、ベッドに座った。
「何か、自分の部屋じゃないような感じだな。魔裟斗もここに座れよ。」
佑宇真はそう言うと、ベッドの上をポンポンッとして、オレを呼んだ。
「うん。」
オレは、佑宇真の隣に座った。
その時、佑宇真の肩が、オレの肩にふいに触れて、オレは、ドキンッと胸が高鳴った。
ドクンッ、ドクンッと胸が早鐘のように脈打つ。
ふいに、佑宇真がなぜか、オレを抱きしめてきた。
(えっ!?)
オレは、もっと胸が脈打ち、その音が佑宇真に聞こえてしまっていると思うと、恥ずかしくなった。
「な…何!?佑宇真、どうしたんだ?」
オレがそう聞くと、佑宇真は、
「病院ではありがとうな。いつも見舞いに来てくれて……。俺、すごい嬉しかった!」
そう言った。
佑宇真がオレを抱きしめてきたのは、佑宇真なりの感謝の表れだろう。
「当たり前だろ?俺と佑宇真は、幼なじみで親友なんだから……。」
そう言って、心の中では、ズーンッと落ち込んでいた。
『幼なじみで親友』
今のオレと佑宇真の関係だ。
『魔裟斗』の姿でいるオレ。
オレが『魔裟斗』でいる限り、佑宇真の側にいられるかもしれないが、『幼なじみで親友』の関係。
それが続くワケだ。
もし、仮に、佑宇真に好きな女の子が現れでもしたら……。
オレは、ものすごく胸が痛かったし、切なかった。
「魔裟斗?どうしたんだ?」
その時、佑宇真がびっくりしたような声をして、オレを呼んだ。
(えっ!?)
気づいたら、オレの目から涙がポタッポタッと、こぼれ落ちていた。
オレは、咄嗟に『悲しみ』の涙だと悟られないように、笑顔を見せて、
「佑宇真が無事に退院できたから、嬉しいんだよ。だから、嬉し涙。」
そう言った。
佑宇真はそう言ったオレを見つめていたが、ふいにオレを抱きしめる腕に力を込めた。
「そんな風に泣くなよ。俺、どうしていいか、分からなくなるだろう?」
佑宇真はやっぱり鋭い。
オレの、この『涙』が、『嬉し涙』でないこと
を悟られてしまっていた。
その瞬間、佑宇真に向けられていた『想い』が、涙と一緒に溢れ出ていた。
「…ひっく……。佑宇真ぁ。オレ…、オレ、『男』で、しかも、『親友』って言ったけど……。
」
「うん。」
佑宇真は真剣に静かに聞いてくれているようだった。
「…オレは、佑宇真のことが…、す…好きなんだ。」
言ってしまった。
あの事故に遭う時に言うはずだった『オレの想い』を、佑宇真に……。
でも、佑宇真は今は、オレたちのことを『男同士』だと思っている。
嫌悪感を持たれて、
(やっぱり嫌われてしまうかな?)
と、そう思って、佑宇真に抱きしめるのをやめられると思っていた、その時だった。
佑宇真は、抱きしめる腕を緩め、オレを見つめると、そのままオレの顔に近づいて、口づけてきた。
それは本当に優しく、甘いキスで……。
(えっ!?)
オレはびっくりして、されるがままになっていた。
オレと佑宇真の唇が離れると、佑宇真は、もう一度、オレをふわりと抱きしめると、
「…俺、正直、最初は信じられなかったんだ。『男が男に恋する』なんて……。でも……。今、泣いてる、お前見てたら、不謹慎かもしれないけど、めっちゃかわいいと思ったし、お前の涙、止めてやりたいと思ったんだ。それって、『お前のこと、好き』ってことだと思う。」
佑宇真はそう言った。
オレはといえば、驚きのあまり、口が開けずにいた。
だって、これが驚かずにはいられない。
佑宇真は、『常識人間』だったはず。
それが『男に恋する』なんて……。
でも、元々、オレは『男』じゃない。
『魔裟斗』と身体が入れ替わっているのだ。
となると、佑宇真は、『魔裟斗』に『恋』をしてしまったことになる。
オレは半分喜びながらも、半分は複雑な思いでいっぱいだった。
そして、今はまだ、その『秘密』を、佑宇真には言うことはできないでいたんだ。
「佑宇真、違う違う。そっちは弦の部屋。」
オレは、退院してきた佑宇真に、家のあちこちを教えていた。
弦というのは佑宇真の弟だ。
中学生だが、生意気なヤツだ。
「ここが佑宇真の部屋だよ。」
そう言って、佑宇真を部屋に招き入れた。
佑宇真の部屋は整理整頓されていて、いつもキレイだ。
「…ここが、俺の部屋……。」
佑宇真は呟くようにそう言うと、ベッドに座った。
「何か、自分の部屋じゃないような感じだな。魔裟斗もここに座れよ。」
佑宇真はそう言うと、ベッドの上をポンポンッとして、オレを呼んだ。
「うん。」
オレは、佑宇真の隣に座った。
その時、佑宇真の肩が、オレの肩にふいに触れて、オレは、ドキンッと胸が高鳴った。
ドクンッ、ドクンッと胸が早鐘のように脈打つ。
ふいに、佑宇真がなぜか、オレを抱きしめてきた。
(えっ!?)
オレは、もっと胸が脈打ち、その音が佑宇真に聞こえてしまっていると思うと、恥ずかしくなった。
「な…何!?佑宇真、どうしたんだ?」
オレがそう聞くと、佑宇真は、
「病院ではありがとうな。いつも見舞いに来てくれて……。俺、すごい嬉しかった!」
そう言った。
佑宇真がオレを抱きしめてきたのは、佑宇真なりの感謝の表れだろう。
「当たり前だろ?俺と佑宇真は、幼なじみで親友なんだから……。」
そう言って、心の中では、ズーンッと落ち込んでいた。
『幼なじみで親友』
今のオレと佑宇真の関係だ。
『魔裟斗』の姿でいるオレ。
オレが『魔裟斗』でいる限り、佑宇真の側にいられるかもしれないが、『幼なじみで親友』の関係。
それが続くワケだ。
もし、仮に、佑宇真に好きな女の子が現れでもしたら……。
オレは、ものすごく胸が痛かったし、切なかった。
「魔裟斗?どうしたんだ?」
その時、佑宇真がびっくりしたような声をして、オレを呼んだ。
(えっ!?)
気づいたら、オレの目から涙がポタッポタッと、こぼれ落ちていた。
オレは、咄嗟に『悲しみ』の涙だと悟られないように、笑顔を見せて、
「佑宇真が無事に退院できたから、嬉しいんだよ。だから、嬉し涙。」
そう言った。
佑宇真はそう言ったオレを見つめていたが、ふいにオレを抱きしめる腕に力を込めた。
「そんな風に泣くなよ。俺、どうしていいか、分からなくなるだろう?」
佑宇真はやっぱり鋭い。
オレの、この『涙』が、『嬉し涙』でないこと
を悟られてしまっていた。
その瞬間、佑宇真に向けられていた『想い』が、涙と一緒に溢れ出ていた。
「…ひっく……。佑宇真ぁ。オレ…、オレ、『男』で、しかも、『親友』って言ったけど……。
」
「うん。」
佑宇真は真剣に静かに聞いてくれているようだった。
「…オレは、佑宇真のことが…、す…好きなんだ。」
言ってしまった。
あの事故に遭う時に言うはずだった『オレの想い』を、佑宇真に……。
でも、佑宇真は今は、オレたちのことを『男同士』だと思っている。
嫌悪感を持たれて、
(やっぱり嫌われてしまうかな?)
と、そう思って、佑宇真に抱きしめるのをやめられると思っていた、その時だった。
佑宇真は、抱きしめる腕を緩め、オレを見つめると、そのままオレの顔に近づいて、口づけてきた。
それは本当に優しく、甘いキスで……。
(えっ!?)
オレはびっくりして、されるがままになっていた。
オレと佑宇真の唇が離れると、佑宇真は、もう一度、オレをふわりと抱きしめると、
「…俺、正直、最初は信じられなかったんだ。『男が男に恋する』なんて……。でも……。今、泣いてる、お前見てたら、不謹慎かもしれないけど、めっちゃかわいいと思ったし、お前の涙、止めてやりたいと思ったんだ。それって、『お前のこと、好き』ってことだと思う。」
佑宇真はそう言った。
オレはといえば、驚きのあまり、口が開けずにいた。
だって、これが驚かずにはいられない。
佑宇真は、『常識人間』だったはず。
それが『男に恋する』なんて……。
でも、元々、オレは『男』じゃない。
『魔裟斗』と身体が入れ替わっているのだ。
となると、佑宇真は、『魔裟斗』に『恋』をしてしまったことになる。
オレは半分喜びながらも、半分は複雑な思いでいっぱいだった。
そして、今はまだ、その『秘密』を、佑宇真には言うことはできないでいたんだ。