次の日の放課後。
オレは、寧々(中身は魔裟斗だが)を佑宇真の病室に連れて来ていた。
「佑宇真くん、大丈夫?」
『寧々』の姿の魔裟斗は、さも心配そうに佑宇真に尋ねていた。
「ああ、もう大丈夫だよ。心配してくれて、ありがとうな。」
と、佑宇真は、少し笑いながら、そう言った。
その笑い方が、オレに向けてくる笑顔と少し違う気がして、
「あっ、オレ、花の水、代えてくる。」
そう言うと、そそくさと病室を出た。
オレは、花の水を代えながら、さっきの佑宇真の寧々(中身は魔裟斗だが)に向ける笑顔を思い出していた。
(ああ、そうかぁ。オレ、魔裟斗に嫉妬してるんだ。)
佑宇真にあんな笑顔を向けてもらえるのが、うらやましくて……。
オレは、今、『魔裟斗』の姿で、佑宇真にとっては、『恋愛対象外』だ。
あの常識人間の佑宇真が、もし、仮に今、オレが『告白』したところで、受け入れられるはずもなく、よけいに今の佑宇真を混乱させて、困らせてしまう……。
(それだけは、避けたい……。)
今、オレにできることといえば、こうして、お見舞いに来て、少しでも、佑宇真の記憶を取り戻す、手伝いをすること。
それだけ……。
よけいなことは考えずにいないと……。
特に佑宇真の前では……。
そう心に決めた。
コンコンッ
病室をノックする音。
(魔裟斗か?)
「はい。いてるぞ。」
俺がそう言うと、
「入るぞ。」
そう言って、ひょっこりと魔裟斗が病室に入ってきた。
俺はついに明日、退院することが決まった。
だが、こうして、魔裟斗との二人っきりの時間がなくなるのは、なぜか、寂しかった。
(どうしてかな?相手は男なのに、魔裟斗を見るたびにこんな愛しい気持ちになってるのは?俺はどこか、おかしいのだろうか?)
でも、この気持ちが『恋』なのだと、自覚はしていたが、やっぱり、そこは常識人間。
簡単には認めたくはなかった……。
「佑宇真、花、ここに置いておくぞ。」
と、オレはそう言った。
「ああ、いつもありがとうな。」
そう佑宇真がお礼を言うと、何だか、オレは、照れ臭くなってしまった。
「別にいいんだよ。」
オレは、ちょっと素っ気ない言い方をしてしまった。
その時、ものすごい強い風が吹いて、
ガチャンッ
花を生けていた花瓶が割れてしまった。
「あ~あ、せっかく花、生けたのに、花瓶、割れちゃたな……。」
そう言って、オレは屈んで、割れた花瓶の欠片を拾い集める。
その時、オレが首につけていた物を、佑宇真が目ざとく見つけた。
佑宇真から、誕生日プレゼントにもらった指輪を鎖につけていたのだ。
「魔裟斗、それ……。」
「ん?佑宇真、どうしたんだ?」
オレは、ワケが分からず、聞き返す。
「…っ……。」
と、呻くような声が聞こえた。
オレが佑宇真のほうを見ると、佑宇真は、頭を痛そうに抱え込んでいた。
「佑宇真!?大丈夫か!?沢渡医師、呼ぼうか?」
オレが焦って、そう言うと、佑宇真は、
「…大丈夫だ……。心配するな……。」
だが、まだ頭が痛そうにしていた。
「佑宇真、本当に大丈夫か?」
オレが心配そうに聞くと、
「もう大丈夫だよ。」
佑宇真は、平気そうな顔をしていた。
(良かった~。)
オレは、心底、安心したのだった。
オレは、寧々(中身は魔裟斗だが)を佑宇真の病室に連れて来ていた。
「佑宇真くん、大丈夫?」
『寧々』の姿の魔裟斗は、さも心配そうに佑宇真に尋ねていた。
「ああ、もう大丈夫だよ。心配してくれて、ありがとうな。」
と、佑宇真は、少し笑いながら、そう言った。
その笑い方が、オレに向けてくる笑顔と少し違う気がして、
「あっ、オレ、花の水、代えてくる。」
そう言うと、そそくさと病室を出た。
オレは、花の水を代えながら、さっきの佑宇真の寧々(中身は魔裟斗だが)に向ける笑顔を思い出していた。
(ああ、そうかぁ。オレ、魔裟斗に嫉妬してるんだ。)
佑宇真にあんな笑顔を向けてもらえるのが、うらやましくて……。
オレは、今、『魔裟斗』の姿で、佑宇真にとっては、『恋愛対象外』だ。
あの常識人間の佑宇真が、もし、仮に今、オレが『告白』したところで、受け入れられるはずもなく、よけいに今の佑宇真を混乱させて、困らせてしまう……。
(それだけは、避けたい……。)
今、オレにできることといえば、こうして、お見舞いに来て、少しでも、佑宇真の記憶を取り戻す、手伝いをすること。
それだけ……。
よけいなことは考えずにいないと……。
特に佑宇真の前では……。
そう心に決めた。
コンコンッ
病室をノックする音。
(魔裟斗か?)
「はい。いてるぞ。」
俺がそう言うと、
「入るぞ。」
そう言って、ひょっこりと魔裟斗が病室に入ってきた。
俺はついに明日、退院することが決まった。
だが、こうして、魔裟斗との二人っきりの時間がなくなるのは、なぜか、寂しかった。
(どうしてかな?相手は男なのに、魔裟斗を見るたびにこんな愛しい気持ちになってるのは?俺はどこか、おかしいのだろうか?)
でも、この気持ちが『恋』なのだと、自覚はしていたが、やっぱり、そこは常識人間。
簡単には認めたくはなかった……。
「佑宇真、花、ここに置いておくぞ。」
と、オレはそう言った。
「ああ、いつもありがとうな。」
そう佑宇真がお礼を言うと、何だか、オレは、照れ臭くなってしまった。
「別にいいんだよ。」
オレは、ちょっと素っ気ない言い方をしてしまった。
その時、ものすごい強い風が吹いて、
ガチャンッ
花を生けていた花瓶が割れてしまった。
「あ~あ、せっかく花、生けたのに、花瓶、割れちゃたな……。」
そう言って、オレは屈んで、割れた花瓶の欠片を拾い集める。
その時、オレが首につけていた物を、佑宇真が目ざとく見つけた。
佑宇真から、誕生日プレゼントにもらった指輪を鎖につけていたのだ。
「魔裟斗、それ……。」
「ん?佑宇真、どうしたんだ?」
オレは、ワケが分からず、聞き返す。
「…っ……。」
と、呻くような声が聞こえた。
オレが佑宇真のほうを見ると、佑宇真は、頭を痛そうに抱え込んでいた。
「佑宇真!?大丈夫か!?沢渡医師、呼ぼうか?」
オレが焦って、そう言うと、佑宇真は、
「…大丈夫だ……。心配するな……。」
だが、まだ頭が痛そうにしていた。
「佑宇真、本当に大丈夫か?」
オレが心配そうに聞くと、
「もう大丈夫だよ。」
佑宇真は、平気そうな顔をしていた。
(良かった~。)
オレは、心底、安心したのだった。