そんなことを考えながら、オレは魔裟斗と佑宇真を部屋の外に待たせて、制服に着替えた。
「寧々ちゃん、まだ?」
「寧々、まだか?」
魔裟斗と佑宇真が二人して急かす。
オレは部屋の扉を開けた。
「お待たせ。」
「ほら、寧々、早く学校に行くぞ。」
「うん。」
オレと魔裟斗と佑宇真は急いで玄関を出て、学校へと向かった。

「マサくん。どうしたの?上の空で。」
放課後、同じ料理クラブの香里奈ちゃんが僕に声をかけてきた。
「ううん。香里奈ちゃん、何でもないんだよ。」
僕は女の子たちから慕われている。
かなり嬉しい。
だけど、それはあくまで「友達」としてで、「異性」としては見てくれていない。
別に彼女たちから「異性」として見てくれなくていいのだ。
彼女からだけは「異性」として見られたい。
佑宇真くんと自分を見比べると、改めてそれを感じてしまう。
「あ~あ。」
またため息が……。
(寧々ちゃんが佑宇真くんを好きな気持ち、分かるなぁ。)
優しくて、頼りになって、男らしい、佑宇真くん。
女子に人気があるって聞いてる。
寧々ちゃんもやきもきしてるしなぁ。
僕も佑宇真くんみたいだったら、彼女に振り向いてもらえるだろうなぁ。
今まで、自分を否定することはあまりなかった。
乙女チックな物が好きだし、料理クラブに入って、女子たちに混じって、料理を作ることも好きだった。
だけど、彼女に出会って、180度人生が変わってしまった。
その彼女の名前は柊木 つかさ。
剣道部部員である。
勝ち気な性格のしっかり者で美人。
守ってあげたくなるような女の子ではなく、自分の身は自分で守れるが、なぜだか、その凛々しい姿に一目惚れしてしまったのだ。
「……おい……、おい、優木魔裟斗!」
僕は自分の考えに没頭してて、自分を呼ぶ声にまったく気づかなかった。
「へっ!?」
「へ!?……じゃねえよ。俺のこと、無視しやがって。魔裟斗のくせに。」
と、悪態をついて、僕の前に立っているのは、速水瑠威であった。
速水瑠威くんは、クォーターで、金髪に深いブルーの瞳の美青年。
佑宇真くんとは違った意味で、女子にモテまくっているが、俗にいう一匹狼で 、毒舌家であり、女子たちはなかなか近づけないでいる。
学校の問題児でもある。
だが、そんな彼がなぜか僕にだけはかまってくる。
それは謎だけど……。
「…は、速水くん!?…ごめんなさい。考え事してて……。」
「言い訳するのか?」
そう言って、速水くんが僕に詰め寄ろうとした時、
「速水くん、いつもそうやって魔裟斗くんを困らせないでよ。」
と、香里奈ちゃんが庇ってくれた。
「チッ!おせっかい女。」
速水くんはそう毒づいた。
「俺が用があるのは優木魔裟斗だよ。お前じゃない。」
「何ですって!」
香里奈ちゃんが怒りかけた時、
僕はヤバいと思って、
「香里奈ちゃん、庇ってくれてありがとう。もういいから。」
「…そう?魔裟斗くんがいいなら……。」
と、香里奈ちゃんは怒りを静め、納得してくれた。
速水くんは、僕と香里奈ちゃんの様子を見て、
「ほら、優木魔裟斗、来いよ。」
速水くんにそう言われ、裏庭に連れて行かされた。