「自分であの先輩は危ないって言ってたくせに、なに喧嘩売ろうとしてるんだよ」

高村が呆れてる。


「ちょっと、虫の居所が悪くて・・」

「ほんと、勇ましいよね。天野は」

ますます呆れてる。

「ごめん。 もしかしたら、あの人今度は高村になんかするかも・・」

腹いせに仕返しとかされたら、どうしよう。
あの人ならやりかねない。

「大丈夫でしょ。 僕みたいにひ弱な男に勝ったって自慢にもならないだろうから」

高村はちっともかっこよくないセリフを堂々と言う。

「けど・・」

「じゃあ、お詫びに缶コーヒーでも奢ってよ。 それでチャラね」


駅前のコンビニで缶コーヒーを2本買った。

電車を待つ15分、ホームのベンチに並んで座ってコーヒーを飲む。

口の中にコーヒーの味と香りが広がる。

苦いけど、ほんの少しだけ甘い。


あぁ、私はやっぱり高村が好きだ。

『天野は僕を好きなんだから、それでいい』

もちろんわかってる。

高村は私の気持ちなんて、気づいてない。

あれは付き合ってるフリをしてくれただけ。

けど、それでも、
わかってくれてるみたいで嬉しかった。

誰が何て言おうといいの。

全然お似合いじゃなくったって、

高村が他の女の子を好きだとしても、

私は、高村が好きなんだ。



片思い歴はや5年。

もういい加減、振り向いてもらうからねっ!!