高村は地味だし、全然モテるタイプじゃないから考えたこともなかった。

私以外に高村を好きな女の子がいるなんて・・・

高村が小宮さんを好きになっちゃったら、私はどうしたらいいんだろう。


「遅いよ、天野」

私がとぼとぼと歩いてたら、下駄箱の前で高村に呼び止められた。

そっか、今日は一緒に帰る日だったっけ。

小宮さんの事ばっかり考えてて、すっかり忘れてたよ。

「えっと、ごめん。今日はいいや。
一人で寄りたいところがあって」

高村の顔が見れない。

「そう。じゃ、気をつけてね」

「うん、バイバイ」

あっさりと高村は帰っていった。

風子が大好きな漫画だったら、
きっとこんな時ヒーローは、

「心配だから一緒に帰るよ」とか言って、かっこよく追いかけてきてくれるんだろうなー。


・・・仕方ないか。
私って少女漫画のヒロインタイプじゃないし。
どっちかっいうと、最後は振られちゃう恋敵タイプよね。

なんて下らないことをぼんやり考えながら歩いてたら、いつの間にか八木先輩が行く手を阻んでいた。

「まりあちゃん、今日は一人なんだ。 あの地味な男と別れた?」

ニヤついた顔が鬱陶しいことこの上ない。

「別れてません」

嘘じゃないわよ、だって付き合ってもいないもの。

「あんなダサい男といたらまりあちゃんの可愛さが台無しになるよ~。 さっさと別れなよ。
ね?」

自分の我慢の結界がガラッと崩れる音がした。

それでなくても落ち込んでるところに何なのよっ、この人!