「面倒くせぇ!なんで俺らがこんなことしなきゃいけないんだ!?」
「はいはい、手を動かそうな」
俺たちは今、3年生の卒業式のしおりをホチキスで留める作業中。
といっても、手伝ってるのは放課後たまたま教室に残ってた俺と智貴を含めて5人。
つまり、先生にパシリにされたわけだ。
今日が短縮授業で学校が2時終わりでよかった。
「よしっ…と!あー終わったぁああっ!んじゃ、俺用事あるからお先!!」
「おう、お疲れ」
智貴はんーっと思い切り背伸びをすると、鞄を引っつかんで教室を飛び出して行った。
ありゃ最近気になる子ができたとかいう他校の女に会いに行ったな。
…いいよな。
まだお前には、叶えられる希望があるんだから。
「おい、これ職員室に……」
あー、こりゃダメだな。
作業を手伝っていた他の3人を見ると、死んだように机に伏している。
しょうがねぇな、俺が行くか。
鞄と留め終えたしおりの束を持ち、教室を出た。
忘れ物…はねぇよな。
ふと廊下を歩きながら横を何気なく見たときだった。
「あ…」
教室で1人の女子が机に伏して寝ている。
見間違えるはずがない。
その女子は、紛れもなくカオだった。