フラフラとよろけながら傷だらけの体を引きずるようにしてパパらしき人に近づいた。



服を掴んで精一杯揺らすと、パパらしき人は私にもたれ掛かるように倒れてきた。



耐えきれなくて離れると、パパらしき人は音を立てて車から落ちた。



希輝「ぁあぁぁ……あ、、……っ………」



重りのように重たいその体が、いくら呼び掛けても答えないその顔が、私をどん底に突き落とした。



ガクガクと震える体を無視して、運転席を這いつくばってのぼった。



運転席の座席に倒れ込んでいるママらしき人。



首に大きな硝子の欠片を刺して真っ赤な血を流したままピクリとも動かない。



希輝「……ま、、ま、……っ…………まま…、。」



耐えきれない涙がポタポタとシートにこぼれ落ちる。



青白い頬に恐る恐る手を伸ばして優しく触れる。



希輝「…っ!」



一瞬ピタリと触っただけですぐに手を引っ込めた。



あまりにもママの顔が冷たかったから。



希輝「ぅ……ぁぁぁ………ぁ……、っ。」



この時、初めて『死』を知った気がした。



大量でないにしても血を見ることはあった。



寝ている時はこんなに静かでなくても動かないこともあった。



でも、こんなに体が冷たくなっていることは一度だってなかった。



だから、ただただ恐怖でしかなかった。



この動かない血だらけの人らしき人は、私のパパとママで、二度と動かない、喋らない。



その事実だけが何も考えられない私に突き刺さった。



思考がまとまらないまま、ズルズルと酷く重い体を引きずって車を這いおりた。



その時、ようやく自分以外の声が耳に届いた。



??「ゴメンなさい………ゴメンなさい………」



聞き覚えがあるような、そんな声に思ったよりゆっくりと顔をあげた。



希輝「……ひゅっ……、ぁ……ぁぁあぁっ………ら、、…っららぁ……っ!」



"それ"を一目見てわかってしまった。



百桃の抱える血塗れな塊が、私もよく知る来蘭の頭だということが。



泣きじゃくりながら全く動きもしない"それ"に向かって謝り続ける百桃を、言葉にならない声を発しながら呆然と見つめる。



そうして、どれほどの時間が経ったのだろうか。



その時の意識が飛んでいるかのように、その間のことは全く覚えていない。



我に返ったのは、野次馬の一人であったおばさんに体を揺すられてからだった。