智軌「お、今日はみんな早いな
来蘭、百桃、おはよう」



来蘭「ぉはよぉ」



百桃「おはようございます」



ふわぁと大きく欠伸をしている来蘭と眠気なんて吹っ飛んでパッチリと目が開いている百桃。



今家にいる皆が揃い、どこかホッとして息を吐いた。



智軌「ああ、そうだ。都兎」



都兎「…なに。」



来蘭と百桃が定位置に座ると今思い出したかのようにパパが声をかけた。



智軌「今日は父さんたち休みだけど、希輝と来蘭と百桃と遊びに行くから帰ってきたら一人になるんだ。大丈夫か?」



都兎「……いまさらだろ。子どもじゃあるまいし」



智軌「ハハッ!そうかそうか。じゃあ留守番頼むな?」



都兎「…うん」



軽く反抗期でもあったお兄ちゃんだけど、ぐしゃぐしゃっと髪をかき混ぜるように撫でたパパの手を振り払うことはしなかった。



都兎「いってきます」



「「「「「いってらっしゃい(ー)」」」」」



…お兄ちゃんはまさか思わなかっただろう。



これが、パパとママ、そして来蘭との最後の会話だったなんて…。



…出かける準備が出来たのは、それから数時間後の10時過ぎだった。



智軌「百桃ー希輝ー来蘭ー。忘れ物ないか?」



「「「うん!(はい)」」」



車に乗ってパパが最終確認をした。



運転席にはパパ、助手席にはママ、後部座席には運転席の後ろから私、来蘭、百桃が座った。



智軌「じゃあ出発するぞー」



希輝「おー!」



これが崩壊の始まりだったなんて、この時は誰も気づかなかったんだ…。



希輝「ねーぱぱー!どこいくのー?ゆうえんち?すいぞーかん?」



家を出てから数時間、もう既に違う県に入っているが目的地につく様子はなかった。



そろそろずっと車にいるのも飽きてきた私は信号で止まったきっかけにパパに話しかけた。



姫星「希輝。すいぞくかん、ね。
私も聞いてないけど…どこに行くの?」



智軌「それはなぁ、つ」バァーーンッ



それは、唐突に終わりを告げた。



バリーンッ ガッシャーンッ ドンッ



何が起こったのかなんて、理解出来なかった。



気づいたら私は車から放り出され、地面に転がっていた。



乗っていたはずの車は変に曲がり、潰れて、煙を上げていた。



自分の乗っていた後部座席よりも真っ先に目に入ったのはその前の席。



運転席のドアは全開で、パパらしき人はハンドルに顔をつけて血だらけでグッタリとしていた。



希輝「ぱ……、ぱ…?……ぱぱ………、。ね…ぱぱ…っ!………ぱぱっ!ままっ!」