飛鳥が慌てて雷の携帯に耳を当てるが、もう電話は切れていたらしい。



…葵絆になんかあったんだ。



俺も飛鳥もそうとしか考えられなくて、また頭が熱くなり始めた。



そして、俺が放心状態の雷に詰め寄ろうとしたが、飛鳥に先越された。



飛鳥「雷!!葵絆がどうした!?答えろっ!」



雷「……き、ずなが…っ………。
葵絆の容態が、っ急変したって!!危ない…って、!もしかしたら…このまま…………っ!」



飛鳥がグイッと掴みかかると、雷が泣きそうな顔でそう叫んだ。



飛鳥「ふざけんなっ!葵絆が……っ葵絆が!!死ぬわけねぇだろ!!ふざけたこと言ってんじゃねぇよ!」



雷「ッッでも!このままじゃ……!!」



飛鳥「お前は葵絆が俺たちをこのまま置いてくと思ってんのか!?このまま死ぬわけねぇだろ!」



さっきのようにどんどんと熱くなっていく怒鳴り声が幹部室全体に響き渡る。



こんなにも焦って、慌てて、混乱している2人を見ていたら、俺の中の熱い熱がだんだん冷めていく気がした。



自分より慌ててる人を見ると、自分は正気に戻るみたいなこというけど、ほんとそうだな。



この時ばかりはいつもよりかなり冷めていることを自覚した。



京「…いい加減にしたら?今、おまえらが言い合ってたって意味無いし、葵絆がどうこうなるわけでもない。
葵絆が生きるか死ぬかは、葵絆と医師次第。
今俺たちがやるべきは病院に行くことじゃないの?だから電話来たんでしょ。」



何故か冷静で、冷たく、他人事のようにそう言っていた。



あまりに俺の声色に感情が無かったせいだろう。



胸倉を掴みあっていた2人が目を大きく見開いて俺を見ていた。



そんな2人の様子さえ、俺は冷めた目で見た。



さっきとは打って変わってシーンとする幹部室のドアノブに手を掛けた。



すると、何も言わずに2人は静かに俺のあとをついてきた。



これは好都合だ、と俺は無言のまま幹部室を出て病院へ向かうため、バイクに跨った。



2人も、何も言わずにただバイクに乗り、俺のあとをついてくるように病院まで俺のバイクを追いかけてきた。



……だから、忘れたんだ。



冷静になったと思っていたくせに全くで、あれだけ責め続け、自分自身へのイライラをぶつけていたくせに。



ただ謝り続けていた、、百桃のことを…