-翌日。



その日は珍しく夕方に雨が降り、じめっとしていて蒸し暑く、今にも再び雨が降りそうな雲の多い真っ暗な空。



そんな日なのに、俺は無意識的にあの小さな公園に足を向けていた。



時刻は日を越した午前2時。



公園に着き軽く全体を見渡すが餓鬼どころか人一人いない。



俺はあの餓鬼を待つべく、ポケットから煙草を取り出した。



その時、クイッと後ろからスーツの裾を引っ張られた。



「誰だ。」カチャ



いつもの如く絡まれるのかと思うと面倒で、懐にあったチャカを取り、引っ張ったそいつに押し付けた。



「……ごめんなさい。」



だが、押し付けたそいつは前日と変わらない無感情な目で俺を見上げて謝ってきた。



そんな餓鬼を見て俺はすぐにチャカを下ろしたが睨みつけたまま餓鬼に問いかけた。



「…てめぇ、どっから来た。」



「……あっち」



掴んでいた手を離し、さっきまで俺が向いていた方を指さした。



見るからに嘘はついてねぇ。



だが、俺は餓鬼に声を掛けられるまでその方向を見てたし、餓鬼が視界に入れば嫌でもわかる。



…それだけじゃねぇ。



餓鬼は昨日チャカを使ったにも関わらず、殺気や恐怖どころか気配さえもなかった。



昨日はあいつらの強い殺意と狂気に隠れてただけかと思ったが、実際はそうじゃねぇ。



餓鬼自体に気配がねぇんだ。



「おい。」グイッ



そう考えると一つしか結びつくことがねぇ。



警戒の欠片もねぇ餓鬼の腕を思いきり引っ張り、屋根のあるベンチに座らせた。



「てめぇ、何処のイヌ(スパイ)だ。」



「え……?」



「何処だって訊いてんだ!!答えろ!!!!」