それから、沈黙が続く。
あまりにも静かで、このまま餓鬼を置いてさっさと退散しようと、無言で背を向け歩き出す。
…が、クイッと後ろからシャツを掴まれ、吃驚して振り返ると、餓鬼が俺のシャツを掴んで俺を見上げていた。
パシッ
一応泣かれると面倒だから、軽く、シャツを掴む餓鬼の手を振り払った。
だが、餓鬼は依然として無表情で俺を見上げるだけで何も喋ろうとはしない。
「……何なんだ。用があるなら早くしろ」
約5分、餓鬼が何か言うまで待ってやろうと思ったが一向に何も言わないため、舌打ちして餓鬼を睨む。
普通の餓鬼なら俺が睨めば泣くか逃げるかの二択だが、その餓鬼はただただ無表情を貫いていた。
「……あなたは、あまつちとせ。あまつぐみの、くみちょう。」
一字一字純粋に言葉を発する姿は、何故だか普通の餓鬼より弱々しく見えた。
「ねぇ、ぼく、あしたもここにくるよ。」
何の感情も感じさせない餓鬼の声色はスッと俺の中へ入っていった。
「……ずっと、ここにくるよ。
ありがとう、あまつちとせさん。」
ニコリともせず、礼を言った餓鬼はそのまま背を向けて公園を出ていった。
何が言いてぇのかもさっぱり分からねぇ餓鬼に、何故か俺は興味を持った。
幼なながらチャカ(銃)までもを扱えるあの餓鬼が。
物珍しいのもあったのかも知れない。
あの純粋な金髪も、あの無感情な真っ赤な瞳も、あの弱々しい傷だらけの身体も。
…俺はあの日、"意味の分からない餓鬼"に興味を持った。