「ちがうよっ!あっちのホテルには時雨とすーくんがいるんだよ!!!!
助けなきゃっ!死んじゃうよ!」



目の前の火事が起きているホテルに、しーとすーがいると。



今までにないくらい泣きそうな顔で俺たちに訴えるひよ。



「え!?でも…」



「私が行ってくるから2人はホテルの前で待ってて!」



「ひよ!まってよ!」



俺が呼び止める前に、ひよは部屋を飛び出して行ってしまった。



「ひま!どうするの!?
ひよがかえってこなかったら…!」



情けない話、俺はしーたちより助けに行ったひよが帰ってこないと考えたら怖くて堪らなかった。



「ううん。そんなことさせない!

僕たちも行くんだよ!あっちに!」



今にも泣きそうな俺にひまは窓の外の目の前のホテルを指差して自分たちも行くのだ。と言った。



「え…!?でもっ!」



「いそいできめて!
早くしないと時雨たちだけじゃなくてひよもあぶないんだよ!?」



弱気な俺と違って、ひまは強気で俺を叱る。



「でも…!」



それでも俺は、自分が燃え盛る炎の中に入るのが怖かった。



「もういい!ひなはひよに言われたとおり待ってれば!?
僕は行くから!」



ひまは俺を置いて部屋を出ようとしたが、俺はその背中を止めた。



「まって!!俺も行く!」



怖いけど、ひよもひまも、しーたちもいなくなると考えた方が怖かった。



「…うん。行くよっ!」



俺とひまは手を繋いでホテルを出て隣のホテルへと走った。



隣のホテルにはまだ消防車も救急車も居らず、ホテルから出てくる人だかりや野次馬でいっぱいだった。