ずっと握り締めていたケータイに情の無いような温度を感じた。 涙が溢れてばかりの瞳は、涙腺を締めることを知らない。 ―私、強くなるって決めたでしょ? ―しっかりしろ、波音。 ―強い女は、泣かない。 涙をぬぐって、鏡を見る。 いつも泣いているせいでなれてしまったのか、そんなに目は赤くない。 「よし。波音っ。」 自分で自分を励まして部屋を出る。 向かった先は隣の部屋。 ―陸の部屋。