『…そういうことじゃなくて、さ。』
「……?」
振り返ってみた杉原さんは、なぜか私と目を合わせてくれなくて、ためらいがちに口を開いた。
『――これ。』
「っ…――!!」
控えめに、杉原さんの右手から差し出されたのは、赤色のお守りで。
暗めの照明の中、私の目の前に現れたお守りは、正真正銘、私が探していたものだった。
『…もしかして、違った?』
「……っ」
あまりの驚きに固まってしまって、ピクリともしなかった私の様子を見て、不安に思ったのか、そう問いかけた杉原さんに対して、声も出ない私は、今できる限りの力で、首を横に振った。
ゆっくりと、杉原さんからお守りを受け取ると、その重さを感じて、やっとこれは現実だと理解できてくる。
『座席シートの下に落ちてた。』
「…っ、ありがとうございます…!」
お守りを受け取った瞬間、心からの安堵が私の中でこみあげてくる。
良かった…本当に良かった…!
私の中で、このお守りは、世界で一番大切なものだっただけに、この時…無意識にお守りを見つめて微笑んでいたことさえ、気付かなかった。