お店の中はタバコの匂いと煙。
お酒の匂いが充満していた。

きっとさっきまでお客が居たんだと分かった。


「週末の稼ぎ時に悪いな」


獅朗も気がついていた。


「まぁ、椿が一緒なら嫌とは言えねーからな」


学はカウンターの椅子に座ってタバコに火を付けた。
薄暗いなかでタバコの火がやけに鮮明に見え、ビクッと身体が震えた左肩をギュッと掴んだ。


「あっ、悪い」


学はそう言ってタバコを消した。

学がそうしたのは、何も言ったことがないのに、一緒に居る中で私が火が苦手だと言うことを感じていたんだろう。


「大丈夫……」


学は私を確認してから「で、わざわざ店まで来て何?」