チッと獅朗の舌打ちが聞こえた。


「椿」

「……」

「椿」

「……」

「シカトしてんなよ」


身体ごと獅朗の方へ向かされ獅朗と視線が合う。

獅朗が何かを言おうとした時「着いたぞ」と嵐が声をかけてきた。
そして、獅朗はまた舌打ち。

車はネオンの消えている店先で止まった。
土曜のこの時間にネオンが消えているってことは、私達が来るからだろう。


「降りるぞ」


獅朗は車から降り私が降りるのを待っている。

降りるとまたすぐ私の手を握る。


「さっきも言ったけど、逃げないから離してよ」


獅朗はチラッと私を見て「桐谷に連絡しろ」と自分の言いたいことだけを言った。