私が立ち上がるのを待っていたように、

松田君は歩き出した。

私もあわててそれについていく。

こんなところで独りぼっちにされたら

たまらない。

メガネは落ちてくる途中に

外れてしまったのか、

そばにはなかったから、

私のつけているものは今マスクのみ。

少し心細いけど、仕方ない。

元はといえば私が蛇を見て

パニックになったのが悪いんだし。

そんなことを思いながら

数歩前を歩く松田君の背中を

追いかける私。

ふと、その背中が動くのをやめ、

私はもうすぐでぶつかりそうになる。

どうしたんだろう。

「あのさ」

松田君が真剣な顔で振り向いた。

「寺坂が美人だってこと、

 誰にもいわねぇから」

......え....。