私の目の前で松田君が
サッと立ち上がった。
私は上目遣いになって松田君を見る。
信用。できないよな。
口が軽そうには見えないけれど、
所詮人間だ。
きっと誰かにポロッと
言ってしまうに決まってる。
私にとって顔を見られたことは
大事件だけど、松田君からしたら
ただの話のねたにしかならないんだから。
松田君はきっと、口を封じることに
何の責任も感じない。
そして自分に責任を感じない隠し事は
最後まで隠し通せないだろう。
だから、自分しか信用できない。
自分で自分の身を守るしかない。
今の家を引っ越さずに
行ける高校を探そう。
そう思って私は立ち上がった。