狂ったように泣きじゃくる
私の目の前に、白い何かがそっと
差し出され
私は泣くのをやめて顔をあげた。
「そんなに顔を見られるのが嫌なら、
これつけろよ」
松田君がマスクを手に、
無愛想な顔でそう言う。
「もう何も聞かねぇから。ごめん」
松田君が私から目線をそらす。
感謝すべき場面なのかもしれないけれど、
今の私にはそんな余裕もない。
”顔を見られた ”
その事実が私の心を苦しめているんだ。
私はしばらくそのままでいた。
差し出されたマスクも受け取らず、
泣きもせず、
ただ呼吸だけしていた。
木が洗ってくれたきれいな空気が、
私の心を少しずつ落ち着かせてくれる。
やがて冷静になった私は、
小さく深呼吸してからマスクに手を伸ばす。
「取りみだしちゃってごめんなさい」
それまでマスクを私に差し出したまま
そっぽを向いていた松田君は、
私の顔を見ずに、さらに
マスクを押し出してくる。
私はそっとそれを受け取った。