「…め？…姫！？」

「……え…？」

目が覚めると真上にハク様の顔。
ああそうか。
さっきのショックで私、倒れたんだっけ…。
「湯婆婆様に言わなきゃ…。」
そう言って立ち上がろうとする私を、ハク様が抱きとめた。
「ハク様？何を…」
「千は、大湯女になった。」

「は？」

意味、不明。

「どういう事でしょうか？」

「つまり、そういう事だ。」

「どう、して…。」
ポロポロと大粒の涙が溢れる。

「私が悪いんだ。私は姫が客と寝ることがどうしても許せなかった。たとえ、それが仕事であっても。だから、千を犠牲にした。」

「最低ですね。」

私はハク様を残して千尋の元へ向かった。

ﾟ･*:.｡❁

「千ッ！」
やっと見つけた。
千尋はいつものポニーテールではなく、サラサラな髪を下ろしていた。

『これから私達は友情の証に毎日ポニーテールでいる事っ！』

あの約束は、忘れちゃったのかな…。

それとも、仕事柄しかたなかったのかも。

「千！そ「来ないで。」…？」
千尋の声は冷たかった。
今までに聞いたことがないくらい、愛がなかった。

「私がハクの事好きって知ってた癖に、ハクをたぶらかしたんでしょ？」

何を、言ってるの？
「そんな事してない！する訳ない！」
「したじゃない！」

千尋は小さい子みたいに泣き喚き、
「どうせ皆姫の事が好きなのよ！姫なんかいなければ私はたくさんの愛情を受けていた筈なのに！それなのになんで！？」

「ちょっと千！なんか誤解してるんじゃないの！？」
私がそう言うと、千は見たこともない意地悪そうな笑みを浮かべ、
「ハクを奪い返すから。」
と言い、去っていった。

（なんなの。もう…。）