「あ、引き留めてごめんね。時間大丈夫?」


腕時計を確認しながら、井上が尋ねてきた。


「あぁ、別に。これから会うの、高校の友達だし」


「そうなんだ。私はこれから職場の飲み会なんだ」



「飲み過ぎるなよ」



「大丈夫。今日はお酒を注ぐ係りに徹底するから!・・・みんな忙しいだろうけど、集まりたいね」



「うん。そうだな」



一言二言言葉を交わし、じゃあと手を降りながら井上は去っていった。
自分も釣られて手を降る。
人に手を降るなんて、学生の頃ぶりではないだろうか。





さて、行くか。




井上が人混みに消えていくのを確認し、待ち合わせ場所まで歩き出す。












《井上凉花》


高校の同級生で
卒業以来会っていなかった


俺が、好きだった人である。