ハロウィンが終わった途端、街は一気にクリスマスモードに変わる。かぼちゃや魔女の飾りが外され、サンタクロースやトナカイが新たな主役となった今日この頃。
11月になればそれなりに寒く、スーツの上に着たコートをそろそろ厚手のものにしなければと考えていた。
ポケットに手を突っ込み、これ以上熱を逃すものかと保温を試みる。

すっかり暗くなった空。
しかし周りは店が建ち並んでいるため、星は拝めそうにない。
横を見ればショーウィンドウに写る自分の姿が目に入る。


寒さのせいだろう。陰気な顔をした男がいる。
数秒見ていただけなのに、けっこうな時間がたっているように感じたのは年のせいだろうか。





あれ、今何時だろう?


そう思って同じポケットに入れていた携帯を取り出す。
時刻を確認すると、まだ余裕があった。





「あの、落としましたよ」


その声に振りかえると、一人の女性が立っていた。
手には男物のハンカチ。
携帯を取り出す際に誤って落ちてしまったらしい。


「あ、ありがとうございます」



ハンカチを受け取り、お礼を言って立ち去る。
つもりだった。



「あの、永瀬君?」



女性は真っ直ぐに俺を見て、そう言った。