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「なに落ち込んでんの?」



目の前の彼はニコニコしたまま私に声をかける。



「………なんでもないです。」



わたしの頬はむくれたまま。



「なんでもない奴がする顔ちゃうで?」



わかってるよ。

だからって今声をかけてこなくたっていいじゃない。

同じ部署の、1コ上の先輩。




「どうしたぁん?」



そこらへんの女子よりも女子力を放つ彼の笑顔が素敵過ぎて、逆にこちらが参る。



「………」



「………?」



黙っていても、それに付き合ってくれる優しさ。

今日の仕事は終わったはずなのに、2人で居残るフロア。


私の言葉を待ってくれている。




「………振られました。」




「あらぁー、そら落ち込むわなぁ。」




あまりに軽い返事。

ちらっと彼を睨んでやると、まだニコニコしたまま。




「何が楽しいんですか?あたしが振られて、おもしろがってるんですか?」




「いやぁ?」




私の頬はむくれたまま。




「俺にチャンスが回ってきたかな?って思ってるだけ♪」




………え?




思わぬ言葉に、間抜けな顔を彼に向けてしまう。




「そんな顔も、全部、君が好きやで♪」