唯衣と流川は、夕食のために部屋を出ていった。
観光まで引っ張りだされたオレ、
なぜか、この時間は留守番。
ま、いっか。
ご飯食べれるわけじゃないし。
一人になった部屋で、ぼんやり天井を見ていると。
「失礼しまーす」
仲居さんが入ってきた。
なんだなんだ?
唯衣と流川ならいねーぞ。
不思議に思っていると。
「よいしょっと」
ふすまを開けて、そこから布団を引っ張り出した。
手際よく二組の布団を敷き始めた仲居さんは。
「カエルさん、お留守番ですか?」
オレに声をかけてきた。
こんなところは唯衣にそっくりだ。
が。
返事がないことを分かっていて話しかけてくる唯衣と、
返事がないことを残念に思っているこの仲居さんとでは、
全然、意味が違う。
オレが黙っているのを、しょんぼりして見つめる仲居さんがそこにいるわけで。
ごめんな。
返事したくてもできねーんだ、オレ。
なにやら顔を赤らめた仲居さんは、
布団同士をぴったりとくっつけて。
あああ…
唯衣が戻ってきたら、また騒ぐぞ、これじゃ。
人間の事情をいうものを少々理解したオレは、
ぴったり寄り添った布団を見て、苦笑した(つもりだ)。