────…


「凛音、お前その声……」


「………」


陽から逃げる様に立ち上がり、震える拳をグッと強く握り締めて陽の瞳を真っ直ぐ見つめる。


「凛音……?」


突然立ち上がったあたしを食い入る様に見つめた陽は、戸惑いの色を更に深くした。



「……陽、ごめんね」


やっぱり最後に見るのは笑顔じゃないんだね。


仕方ない事なんだと思いつつもやっぱり胸が痛む。



「陽、元気でね。……バイバイ」


陽の顔をしっかり目に焼き付けて、踵を返す。



「凛音!!」


「……陽、離して。あたし行かなきゃ」


皆と顔合わせるなんて無理なの。


だからお願い。離して。



「嫌だ。離さない。十夜達が来るまで離さない」


「………っ、」



陽。

あたしは皆に逢いたくないの。

ううん。逢えない。


電話でもこんなに心臓がドキドキ言ってるのに、直接逢うなんて絶対に無理だ。


だって一言。たった一言十夜の声を聞いただけでこんなにも胸が苦しくなる。


心が張り裂けそうなぐらい苦しくなる。


もう、あの時に見た光のない瞳なんか見たくない。



「……ごめん。ごめんね。無理だよ。あたしには無理。逢えない。逢えないよ……」



小さくなっていく語尾はまるであたしの心情を表しているかのようで。


「……っぅ」


涙が、溢れた。