苦しい。苦しいよ。

また、怪我させてしまった。


怪我をして欲しくないから離れたのに。

あんなに辛い想いをして離れたのに。

これじゃ全然意味ないじゃない。



どんなに強く願っても、神様は叶えてくれない。


皆が怪我をしない為ならどんな苦しみでも耐えると、そう決意したのに。


あんなにも強く願ったあたしの願いを、神様は叶えてくれない。




本当は、どうしようもなかったんだと分かってる。


陽が自らあたしの元へ来たんだって、どうしようもなかったんだって分かってる。



それでも。

何で倉庫に居なかったんだろうとか、何でもっと早く捜しに行かなかったんだろうとか。

そうやって自分を責める事ばかり考えて。


「陽……」


後悔が、心を蝕んでいく。






「凛音、何で俺が此処に居るって分かった?」


体勢を入れ替えてその場に腰を下ろした陽が、訝しげにあたしを見上げる。


「倉庫に行った時、『リンに客が来た』って聞いたから」


「でも、俺名乗ってない」


「……特徴聞いたの。それですぐに陽だって分かった」



そう言って落としていた視線を再び戻すと、目が合った陽は泣きそうな、それでいて嬉しそうな。


何とも言えない表情であたしを見ていた。



「ありがと。俺だって気付いてくれて」

「………っ」

「嬉しい」


なんて表情で笑うんだろう。


陽が見せたのはさっきとは比べ物にならないぐらい優しい笑顔で。


照れ臭そうに笑うその表情に、さっきとは違った意味で心が突き動かされる。