「……凛音?」
「陽……」
そっと身体を離した陽の表情には戸惑いが溢れていて。
「陽に、言ったんじゃないよ」
何とかしてその戸惑いを消してあげたくて、直ぐに否定した。
陽に“消えろ”だなんて言わないよ。
そんな事、言う訳がない。
「良かった……」
あたしの真剣さが伝わったのか、安堵の溜め息を洩らした陽は柔らかく頬を緩めた。
その安心しきった表情にあたしもつられて笑みを零す。
けれど、陽の唇が緩やかに弧を描いた瞬間、陽が突然その場に崩れ落ちた。
「陽っ!!」
突然蹲った陽に直ぐ様身を屈め、肩に手を添えて顔を覗き込む。
「陽!?」
陽の表情はさっきとは違い苦痛に満ちていて。
もしかして、と眉を寄せた。
「陽、大丈夫!?何処か怪我したの!?」
片目を閉じて痛みを堪えているその表情にどうしたらいいのか分からなくなって、身体が小刻みに震え出す。
「陽──」
「……っ、大丈夫」
「でもっ!」
「……カッコ悪ぃな、俺。さっきあんなに偉そうに言ってたのに……」
痛いのに、それでも無理矢理笑顔を作ってみせる陽に、どうしようもなく胸が締め付けられた。
「陽は……陽はカッコ悪くなんかないよ。カッコ良かった。凄く、カッコ良かったよ!」
「凛音……」
陽の服をギュッと握り締め、泣きそうになるのを必死で堪える。