“凛音!!”


声になっていない呼びかけ。

けど、ハッキリ聞こえた。



『陽……』


泣きそうになった。

真っ直ぐあたしの元へ走ってくる陽にはさっきの威圧感なんて全くなくて。


その泣きそうな表情に涙腺が緩む。



「………っ、凛音」



陽の声が、痛いぐらい胸を締め付ける。


離すまいと力強く抱き締める腕も。


「逢えて良かった……」


泣きそうなぐらい切なげな声も。


『陽……』


全て、あたしの心を刺激する。




陽は温かい。

心の内を惜しみもなく全てさらけ出し、その温かさで相手を包み込む。


偽りのないその想いが心にじんわりと染み込んでいくんだ。


だから離れたくないと思う。

ずっとずっと一緒に居たいと思う。




「陽……」


覆い被さる様に抱き締めてくる陽から離れようと、少しだけ身を捩る。


と、その時。


陽の後ろで踞っていた男が地面に手をついて立ち上がろうとしているのが見えた。


その男の表情は険しく、陽だけを捉えていて。


それを見て、この男が今から何をする気なのかを悟った。



まだ陽を狙っているのか。

いい加減懲りればいいものを。


『──消えろ』



陽に抱き締められたまま、これ以上陽に手を出させないように釘をさす。



『今すぐ』


追い討ちをかける様にそう言うと、男達の顔がみるみる内に恐怖で歪んでいった。


男達は直ぐに立ち上がり、おぼつかない足取りで一斉に走り去っていく。