この封筒が届いたのは昨日のことだった。

夕刊をとりにポストに行くと、葉書や封筒が何枚か入っていた。
ほとんど宛先は親。
しかし1つの封筒には篠原美希様と書いてあった。
美希は文通してる相手なんか居ないし、手紙なんて滅多に来ない。

美希は部屋に戻り、封筒を見つめた。
無機質に印刷された文字。
宛先は『篠原美希 様』。

送り主は…と裏を見た瞬間、美希は頭が真っ白になった。
『しのはらみき より』
ひらがなで自分の名前が印刷してあった。

美希は慌てて封筒を開けた。
中には鍵と手紙が2枚入っていた。

見覚えのある鍵だった。
ドラマで使われた鍵に似ていた。
金色の少し錆びた鍵。

美希はまさかと思いながら手紙を読んだ。


『1番目の小夜子はあなた。

1つ、始業式の朝、赤い花を活けよ
2つ、文化祭で小夜子というお芝居を演じよ
3つ、卒業式に次の小夜子を決めよ』

2枚目には
『あなたが小夜子だと見つかってはならぬ。
しかし小夜子という存在をしらしめよ。』

無機質な印刷の文字はこれだけだった。

美希は混乱した。
小夜子の手紙がきた。

私が小夜子になる?
あれはドラマの中の話じゃないのか。
なぜ送り主が私の名前なのか。

混乱する頭とは裏腹に身体は正直だった。
興奮し、さっそく花屋さんに向かっていた。

赤い花…何を買おうかな。
ドラマと同じ、バラにしよう。

美希は早々と横断歩道を渡った。