「…よも!無理だけはするなよ」

 部屋を出る直前にかけられた言葉に振り返ると、お父さんは笑って見せて、壁の向こう側のドアに消えていきました。
 そして、面会室のドアが閉められました。

 しばらく呆然とドアを見つめてその場から動けませんでした。

 本当にあっという間過ぎて、まだお父さんに会えるんじゃないかって…。

「…ねぇ、キミはあの事件の被害者なんだよね」

「え?」

「恨んでないのかい?だって、誘拐されて、監禁されていたんだろう?」

 私を案内してくれた警察の人は不思議そうな顔をされていました。

「…全部ウソです。私は誘拐されたのではなく、保護してもらって警察にも届けられました。…でも、捜索願も何も出されなかった。監禁だってされていません。私ちゃんと義務教育受けてますから。高校にだって通っています」

 私の言葉にますます表情を困惑の色に染めていく警察の人。
 TVの内容とも、警察の起訴状とも全く違う言葉に困惑しているのでしょう。

 そんな困惑されたままの顔で、受付のところまで送り届けてくれました。

 そこには神野くんと雷斗くんが待っていたはずですが、知らない間にスーツ姿の人が3人くらい増えていました。