……まぁいいか。
すっごく気になるけど我慢しよ。
幻覚じゃなくて本物だし、帰って来るわけだしね。
でもちょっと心配になって
「ハル…… 帰って来るよね?」
訊いてみた。
「うん、今日は午後の生放送で番宣だけだから、帰りは早いです」
そういう意味じゃないんだけど……
ん?
「なにっ!?
今日テレビ出るの!?
録画しとかなきゃ!」
「いやぁ、録画なんていいですよ〜
テレビ観てもらえれば嬉しいかな、ぐらいだし」
何言ってんだいっ
録画するもんねー。
朝食も済み、支度をしたハルが二階から下りて来て
「そろそろかな?」
時計を見ながら呟く。
ーピンポーンー
玄関のチャイムが鳴り、出てみると……
「おはようございます」
ゲッ!
昨日のムサ男!
でも見た目はムサイけど愛嬌のある笑顔だし、人当たりも良さそう。
「おは……」
あたしが言いかけると後ろから、
「あ、マネージャー、おはようございまーす!」
と、ハルの元気な声にかき消された。
あ、ムサ男はマネージャーだったんだ。
バッチリ帽子とサングラスで変装したハルは、急いでスニーカーをトントンさせながら履くと、
「じゃ、行ってきます!」
とムサ男の車に乗り込んだ。
「行ってらっしゃい!」と手を振ると、車の窓を開けて手を振り返してくれる。
あのハルが大勢のファンの前じゃなく、あたしだけに手を振ってくれてる……
ムフフフフ……