「……ヒント、いる?」

「いらねーよ。そういうのは自分で見つけないとダメだ」

「うん」

 ドライヤーを止めて櫛で髪を整えてやると、リィが振り返って「ありがと」と礼を言った。それからまた俺の二の腕をジッと見つめているので──むず痒くなって後ろに退いた。

「触んなよ。お前の触り方、くすぐったい。指先でやさしーくは、ダメだ」

「……だめ?」

「触るならガッ! と来い。ガッ、と」

「……ごめんね?」

 こてん、と首を傾げながらそう言ったリィは、反対側のソファに立てかけておいた俺の剣──『アストレイア』を手にした。

「いい?」

「ああ」

 了承してやると、リィはアストレイアを鞘から引き抜いた。三つ折りになっている剣は、軽い音を立てて刃を広げる。

「……重いね」

 リィは片手では水平を維持できず、両手に構え直した。

「そりゃあなー。ヴァトライカで作った剣だからな」

 ドライヤーを洗面台に戻してリビングに戻ってくると、リィは軽く素振りしていた。

 まあ、素振り出来るだけ凄いよ。父さんと同じ可変式の剣は、結構な長さがあるからな。分裂させれば二刀流にもなるし、柄部分を連結させて槍みたいにも出来る。戦闘の幅が広がる面白い武器だけど、扱いが難しい。俺もまだまだ扱いきれていない。