サニタリールームで大暴れした後、俺たちはリビングのふかふか絨毯の上にうつ伏せになって向かい合っていた。

 ちなみにここは橘邸の客室。

 城のように広い屋敷の一番西側に位置し、ダークブラウンの落ち着いた色の床に、アイボリーの柔らかい色の絨毯と壁に囲まれた、居心地の良い空間だ。

 広いリビングの端には簡易キッチンがついていて、キッチン隣の奥がサニタリールームで、リビング側から二つの寝室へ行ける。もうここだけで立派な家だ。俺たちには勿体無いくらいの広さがある。

 ちなみに一階だから窓から直接庭に行けて、朝の修行の後、すぐにシャワーを浴びに戻ってこれるのが便利だ。


 それで、頬ずりしたいほど肌触りのいい絨毯にうつ伏せに寝転がって、何をしているのかと言うと。

「いいか?」

 真っ直ぐにリィを見つめて訊ねると、リィも真剣な目でこっくり頷いた。

「うん」

 俺とがっしり右手を繋ぎ合わせたリィは、かなりやる気だ。眠そうな目が眠そうじゃなくなってる。繋いだ手からも闘気が感じられる。

「じゃあ、行くぞ。レディ……ゴウッ!」

 声と同時に、右手を中心に全身に力を込めた。リィの方からもぐっと力が入り、繋いだ手は中央で押し合いが始まった。

 これは腕相撲だ。

 なんだか知らないが、散々俺の身体をまさぐったリィに勝負を挑まれた。

 妹の考えていることがさっぱり分からない。でも挑まれたからには全力で受けて立つ。