その妹は真っ直ぐこちらへ向かってくる。

 少し右にずれて隣を空けてやると、洗面台に置いてあるコップからピンクの歯ブラシを取り、俺と同じように歯磨きを始めた。

 髪、濡れたままだと風邪ひくぞ、という意思を込めてリィの髪を指先で弾く。

 リィは「ん」とだけ返事して、シャカシャカと歯磨きを続行。乾かす気はあるのかないのか。

 ないなら後で俺がやってやるか。リィは俺よりも抵抗力が弱いから心配だ。

 旅をしているときも、星を渡るたびに熱を出していた。俺は半日もすれば回復するけど、リィは長引くんだよな。

 すぐ良くなる俺に、母さんは優しい顔で「シンは強いのね」って言って頭を撫でてくれた。父さんは「馬鹿は風邪ひかないんだ。良かったな!」って爽やか全開な笑顔で言った。裏拳で鼻っ柱をぶったたいておいた。

 それはさておき。

 俺はいつもの通り病気に罹っても軽く済むだろうけど、リィはそうじゃない。酷くならないように気をつけてやらないと。

 いざとなれば精霊召喚も考えないとかな。俺は血に頼ってるから、こっちの精霊の召喚はうまく出来そうにない。ミルトゥワから喚び出すにはまだまだ修練が必要だしな。でも癒し系の精霊くらいは召喚出来るようにしておきたい。リィのために。