そんな彼女を差し置き、言いたいことを言ったシンはぐうと鳴る腹を押さえた。

「ま、そういうことだから、この話は終わりな。さー飯食いに行くぞ。早くしないとシルヴィに全部食われちまうからな。あ、シャルロッテ、お前飯食ったのか? まだなら橘の人たちにお願いして作ってもらうから、ついて来いよ」

 シンはソファから立ち上がり、すっきりとした笑顔でそう告げ、スタスタと部屋を出て行った。

 それでもシャルロッテは動かない。

 一秒、二秒……五秒……十秒……シャルロッテは動かない。

「……ロッティ。大丈夫……?」

 兄の酷い対応に申し訳なさを感じつつ、リィが声をかける。するとシャルロッテは紅い瞳をくわっと見開いて、リィに飛びかかってきた。

「リィ、貴女ですの……?」

「え、な、なにが……?」

「シンが嫁に選んだ相手ですわよ! 酷い! 貴女はわたくしの気持ちを知っていたでしょう! それなのに、わたくしのシンを!」

「ロッティの気持ちなんて、今日初めて知ったよ……だって、シンとはいつも喧嘩ばかりだったし、こっちに来るときだって見送りしてくれなかったじゃない……」

「だってシンと顔を合わせると恥ずかしかったのですもの! それにお見送りのときはシンの心臓を撃ち抜くために修行をしていたのです! 父上の心臓を撃ち抜いた、母上のようになりたくて!」

「そ、そうだったの……」

 たぶんそれ意味を間違えて捉えている、とリィは心の中で突っ込んだ。

「そうです! だからって酷いですわ! 貴女が相手ではわたくし絶対に敵わないではありませんか!」

 何故相手が自分になっているのだろう。

 リィは首を傾げるばかりだ。