「一日、終了っ……」

 橘邸の自室。

 色々あってぐったり疲れた双子は、リビングのソファに突っ伏した。

「ああ、これをあと何日続ければいいのか……」

「うん……」

 シンもリィも大きく溜息を零した後、むくりと起き上がった。

「修行は休んで、魔法陣の解読をやろう」

「うん……がんばる……」

 
 けれども、解読作業は難航した。

 解読しても、そこから更に元に戻すための術式を編み出すのが難しかった。夜が更けても糸口すら掴めない状況だ。

「あー、もう今日は休もう! 風呂入って寝よう!」

「うん、そうだね……」

 双子はそこでお互いの顔を見た。

 そして、また少し顔を赤らめる。

「……どうすんだよ、風呂は」

「っ……だ、だめ、見ちゃ、だめ……触ってもだめ……!」

「そんなの無理だって。もう諦めろよ。俺は諦めた。好きに触れ」

「や、やだっ……! 私の体は私が洗う……!」

「あー? ったく、めんどくせぇなぁ……」

 そういうわけで、悟りの境地に入ったはずの二人に再び試練が訪れた。




「今日のお風呂は姉ちゃんが兄ちゃんと一緒に入っから、琴音と入ってこって、言わっちゃ……」

 しゅーん、とした様子で琴音にそう告げたシルヴィに、橘家の面々は衝撃を受けたという。





 この数日後、双子の異変に気づいた橘家当主、和音から主治医の櫻井先生へ連絡が行き、彼の妻である李苑が、たおやかに微笑みながら双子を元に戻してくれた。

 一体どうやって戻してくれたのか、双子にはさっぱり分からない。

 櫻井夫妻の謎が深まる……。