五時間目。

 本日二つ目の目的である国語の小テスト。

 答案用紙は裏返しで提出するため、シンもリィも普通に自分の名前で出せば問題ない。

 リィは楽しげに答案を埋めていき、シンは最後まで唸り続けた。国語教師に「どうしたグリフィノー妹。今日は保健室に行ったと聞いたが、まだ具合悪いのか?」と心配されてしまった。

 そこは大丈夫ですと答え、次の六時間目はやっぱり具合悪いみたいです、と保健室へ退避。授業終了と同時にリィと橘邸へダッシュした。




 その帰り道、知り合いに会わないようにと猛ダッシュで走っていた2人は、途中でピタリと足を止めた。

 橙に染まりだした街路樹が並ぶ向こう側から、ただならぬ気配を纏った人物が歩いてくる。

 黒いスーツをラフに着た、一見普通の若者だ。

「黒爪……!」

「ちがう」

 シンの言葉を即座にリィは否定して、彼と背中合わせになるように立つ。同時に、どこから現れたのか、周囲をスーツの男たちに囲まれた。皆、瑠璃一味の宿敵『黒爪』のような格好をしているが、本人ではない。気配が違う。

 双子は同時に自分の獲物に手を伸ばそうとして、はたと気づいた。

「やべ!」

「……こんな時に」

 2人は今入れ替わっている。持っている獲物は自分の愛剣、愛銃ではない。剣も魔銃も遊びで触ったことくらいしかない。武器で戦うのは無理だ。

「しょうがねぇ、このまま行くぞ!」

「うん」