以下、また回想。



 中身がリィのシンの膝に跨り、甘えながらも傷の具合を心配する野菊。

 行動は突飛だけれど、顔を見れば真剣にシンのことを考えているのが分かる。そんな彼女が愛しくて、リィは目を細めた。

(シンは、野菊ちゃんの優しいところが好きなのかなぁ……時々、鋭い指摘してきてハッとさせられるし……走りすぎるシンを、止めてくれる存在だよね……)

 なんて思いながら、

『野菊、いつも心配してくれて、ありがとう。お前の言葉に、いつも救われてる……』

 とか、なんだかちょっと甘めの台詞を吐きながら、頬にそっとキスをしてみたのだ。リィにしてみれば、兄を想ってくれる彼女への感謝の気持ちでもあった。




「はあぁ!? お前こそ俺の体で何してんだよ!!」

 リィの爆弾発言に、シンは顔を赤くする。

「……? いつも、シンが私にしてくれること……」

「それはリィだからだ! 野菊にはしない!」

「そうなの……? この間添い寝してたから、このくらい普通なのかと……」

「お前ん中じゃ添い寝したらチューするのが普通なのかよっ!」

「……!」

 シンの言葉に何かを思い出して、みるみる顔を赤くするリィ。

 そう、あれは夏の出来事。

 瑠璃一味のみんなと一緒にキャンプに行って、夜中に寝ぼけた霸龍闘がリィの隣に転がってきて、添い寝ちゅーとなった、あの出来事。

「……う、うん、普通じゃ、ない、かも……恥ずかしいことして、ごめんね……」

 赤くなった顔を手で覆いながら、リィは謝る。

「いや、分かってくれればいいけどさ……その、俺の体でそういうかわいい仕草すんの、やめてくれよ……気持ち悪いから……」

 体を丸めてふるふる震える自分の姿を見て、シンは顔を顰めた。