楽しい体育の時間を終え、次の四時間目。

 シンは戻ってこなかったので、もしかしたら寝ているのかもしれない。また授業で指されても困るので、昼休みまで放っておくことにする。

 そうして昼休み。

 お昼ご飯を野菊と一緒に食べてから保健室へシンを迎えに行くと、そのシンが廊下を走ってきた。

「廊下、走っちゃだめ……」

 そう嗜めながら、シンの乱れたハニーブラウンの髪を直してやるリィ。

「あー。……リィ、ごめん」

「……なにが?」

 こてん、と首を傾げると、シンは言い辛そうにしながら、保健室での出来事を報告した。

「霸龍闘が、見舞いに来てくれたんだ」

「霸龍闘が……? そう……」

 リィが具合を悪くして保健室にいると、誰からか聞いたのだろうか。何にしても、リィには嬉しいことだが。

「お腹痛かったんだって言ったら、この間鬼龍に殴られたヤツの後遺症じゃないかって心配を始めてさ。だから、鬼龍に飛び火しないように元気なとこ見せようと思って、布団吹っ飛ばしてベッドの上に立ち上がったら、さ」

「うん……?」

「……スカート、捲れちゃって」

「……」

 沈黙。

 のち、赤面。

「なっ……!」

 リィはシンの両肩を掴む。

「私の姿でいるときは、所作に気をつけてと、家でも、あんなに、言い聞かせたのに……よりによって、霸龍闘の前で、そんな……!」

 ガックガックとシンを揺さぶりながら、リィは涙目になる。

 今日はシンがタイツの履き心地が嫌だと言ったので、ニーハイソックスを履いているのだ。つまり、スカートが捲くれたら見えちゃうのである。

 タイマントーナメントで霸龍闘の試合を見ていたリィは、その見事なガンマン魂に胸打たれ、また『好き』の気持ちが増えたばかり。そんな人にスカートの中を見られるなんて。

「悪かった、リィ。俺のミスだ。でも、まだこの話には続きがあるんだ」

「なに……」

「……霸龍闘の頭に回転肘打ち、更に後ろ回し蹴りを食らわせちまった」

 リィ、声にならない声を上げる。