三時間目、体育。

 本日の目的のひとつ、体力テストが行われる。

 50メートル走、ソフトボール投げなどを行って、リィは感動していた。

(すごい、シンの体……!)

 自分より速い。自分よりボールも飛ぶ。最近は男女の身体能力差をひしひしと感じていたリィだが、まさかこんな形でそれを実感することになろうとは。

(これなら、もっと、もっと……!)

 持久走、反復横跳びをやって、体力、瞬発力の違いを思い知る。

 そして走り高跳びでは、自分の身長より遥か高く跳んでみせた。

(空が、近い……!)

 ふわりと浮き上がる体に、リィは自然と笑顔になった。滞空時間が違う。まさに飛んでいるみたいだった。精霊の力がなくてもここまで動けたら、体を動かすのも楽しいだろう。実際、リィは楽しんでいる。

 それと同時に、思う。

 シンは男だから強いのではない。この力は彼の努力の証。体格に恵まれているわけではない彼が、高みを目指して日々努力してきた証なのだということを、傍で見てきたリィは知っている。

 だから。

 自分は、そのシンの倍以上努力しないと駄目なのだ、と。改めて思うのだ。


 ボスン、とマットの上に落ちたリィの周りに、クラスメイトたちが集まってくる。

「すげーな、さすがシン!」

「やっぱタイマントーナメントの優勝者は違うねぇ」

「でもさ、今日はいつもより綺麗に跳んだよね」

 クラスメイトたちにそう褒められて、素直に嬉しがるリィはふわりと笑う。

「ふふ……ありがとう」

 キラキラと、眩いばかりの笑顔が零れた。

「──!!」

 クラスメイトたちはその笑顔に衝撃を受ける。

(なんか今日のお前、美少年!!)

 なんだかトキメいちゃった人もいたとかいなかったとか。