シンの──いや、“リィの”叫ぶ声で目覚めたリィ。ぼうっとした頭をふらふら揺らしながら起き上がり、ふわあ、と小さく欠伸をした。

「シン……?」

 シンに呼びかけたつもりが、レースたっぷりの水玉キャミと短パンを着た『自分』が、怖い顔で振り返った。

 リィはこてん、と首を傾げた。

 あれ、私だ。

 なんだか怖い顔してる。

 どうしたのかな──。

「お前、リィかっ!?」

 リィが、リィに飛びついた。

 リィは、寝ぼけた目を一度、二度、ゆっくりと瞬きさせた。

「え……?」

「お前がリィなのか? 俺がリィになってんのか? 一体何が起きた! 説明してくれ、おいいいいいいー!」

 寝起きにゆさゆさ揺さぶられて気持ち悪い。

 一体何しているの、シン──。

「……シン?」

「そうだよっ!」

「……シン?」

「そうだよっ!」

「……シン……?」

「だからそうだって言ってるだろっ! 目ぇ覚ませよ、早く!」

 パチリと、深海色の目が開いた。しかし、出た言葉は同じく。

「……シン……?」

「ああぁぁもおぉおおー!」

 このままでは埒が明かないと、リィの姿をしたシンは、シンの姿をしたリィの腕を引っ張って鏡の前に立たせた。少し寝癖のついた赤い髪と深海色の目をした少年が、パジャマ代わりの大きめのTシャツとハーフパンツ姿で立っている。

「え……?」

 自分の視界の正面にいる寝ぼけた顔のシン。

 振り返ると、怖い顔をした自分。

 なんだこれ。

 お正月の夢の続きか?

 いや──。

「お前が俺! 俺がお前になってんだよ! 一体何が起きたっていうんだよおおお!」

 そう喚くリィの姿のシンが煩い。

 どうやら、現実のようだった。