拓斗から、彼は弓の達人なのだと聞いたことがある。
成程、腕の引き締まり具合も、胸板の厚さも、弓をやっているからなのだろう。武人特有の凛とした雰囲気もそこから生まれているのかもしれない。
だがそれ以上に、彼の纏う空気は限りなく透明で、清冽だ。
庭に自然の多い橘邸は、常に精霊たちの姿が見えている。それだけ澄んだ空気をしているのだが、彼の周りはそれを遥かに凌駕している。
清らかで透明な気の流れ。時折その流れに触れるだけで体が震えるのに、その深遠にて崇高な奔流に巻き込まれたらどうなるのか。……恐ろしいのではなく、“畏ろしい”。
そんな印象が、リィを緊張させている。
「……どうかした?」
ジッと見つめられていることに気づいた聖が、眼鏡越しに切れ長の瞳をリィへ向けた。
「あ……いいえ、なんでもありません」
リィは胸の前で手を組みながら首を振った。
「そう? ……夏休みは満喫しているかい?」
沈黙していると緊張が強くなるのだろうかと判断したのか、聖が雑談を始めた。
「はい」
「中学生だと宿題も多いかな? 友達と遊ぶ暇はある?」
「はい、夏休みの初めに、拓斗さんの結婚披露宴で、みんなで海に行きました」
「そうか、リィシンくんやシルヴィちゃんと一緒に企画したんだって?」
「拓斗さんには武術の師匠として、お世話になっていますから……」
「そうか。拓斗くん、凄く喜んでいたよ。良かったね」
「はい」
聖と会話しながら、リィは別の思考を展開している。
やはり、この人は“何か”ある。
リィは聖を見ながら、視界の端に映る小さな精霊たちの姿を捉えた。
成程、腕の引き締まり具合も、胸板の厚さも、弓をやっているからなのだろう。武人特有の凛とした雰囲気もそこから生まれているのかもしれない。
だがそれ以上に、彼の纏う空気は限りなく透明で、清冽だ。
庭に自然の多い橘邸は、常に精霊たちの姿が見えている。それだけ澄んだ空気をしているのだが、彼の周りはそれを遥かに凌駕している。
清らかで透明な気の流れ。時折その流れに触れるだけで体が震えるのに、その深遠にて崇高な奔流に巻き込まれたらどうなるのか。……恐ろしいのではなく、“畏ろしい”。
そんな印象が、リィを緊張させている。
「……どうかした?」
ジッと見つめられていることに気づいた聖が、眼鏡越しに切れ長の瞳をリィへ向けた。
「あ……いいえ、なんでもありません」
リィは胸の前で手を組みながら首を振った。
「そう? ……夏休みは満喫しているかい?」
沈黙していると緊張が強くなるのだろうかと判断したのか、聖が雑談を始めた。
「はい」
「中学生だと宿題も多いかな? 友達と遊ぶ暇はある?」
「はい、夏休みの初めに、拓斗さんの結婚披露宴で、みんなで海に行きました」
「そうか、リィシンくんやシルヴィちゃんと一緒に企画したんだって?」
「拓斗さんには武術の師匠として、お世話になっていますから……」
「そうか。拓斗くん、凄く喜んでいたよ。良かったね」
「はい」
聖と会話しながら、リィは別の思考を展開している。
やはり、この人は“何か”ある。
リィは聖を見ながら、視界の端に映る小さな精霊たちの姿を捉えた。