「お?」

 濃い緑は森だろうか。遠くには鋭く尖る山々が連なっているのが見える。

『これ、もう映ってんのかな?』

 ジジ、と鳴る雑音の中に、懐かしい声がする。

「父さん!」

「父様、そこにいるの?」

 2人は宙に浮かんだ映像に声をかけながら、ソファに座り背筋を伸ばした。

「父さん?」

 もう一度声をかけると、ガサガサ、と音がして、「あっ」と短く叫ぶ父の声がした。

『こっちだ。こっちに映るんだ』

『こっつが~?』

 父の声に続いて、小さな子どもの声が聞こえた。次いで、誰かの顔がアップで映し出される。

『こんつわー! 兄ちゃん、姉ちゃん、おれ、しるびー! よろすぐなっ!』

 光の中いっぱいに映った幼い顔の持ち主が、ぶんぶんと小さな手を振った。

「……誰?」

 双子が同時に首を傾げると、その顔が少し引いた。

 碧色の肩口ほどまである真っ直ぐな髪に、同じく碧色の瞳をした5歳くらいに見える女の子が、愛嬌のある真ん丸な目をくりくりさせ、満面の笑みでこちらを覗き込むようにしている。

『しっかし、兄ちゃんと姉ちゃんはこん中にいんのがぁ。随分ちっちぇなー。ニンゲンのこどもは小せぇと思ってたげんちょ、こだに小せぇとは知んにがったぁ~。こんじは精霊よりちっちぇーべな』

 シンとリィの頭上に、ハテナが浮かんだ。

 5歳ほどの幼児が何を言っているのだろう。しかも言葉が訛っている。西の大陸特有のものだろうか。