最近、両親からの手紙が途絶えている。

 毎日でもいいぞ! と父が言ったので、双子は毎日は無理でも、隔日には手紙を書いていた。そしてその返事も滞りなく送られてきていた。なのにこの一週間、とんと音沙汰がない。

「なにか、あったのかな……」

 一週間前に届いた、『明日からは『竜の背鰭』付近に入る』という文面の手紙を見つめながら、リビングのソファで膝を抱えるリィ。隣に座るシンは深刻そうな顔をしながらも、疑問を口にした。

「『竜の背鰭』って、どこなんだ?」

「『竜の背鰭』は、西の大陸中央部にある、ニルカイナ国とトゥワンダ国、それにシモーヌ国に跨るエイシェット山脈の別名……。ドラゴンの棲息地で、人族は滅多に近寄らない……」

「ドラゴンの棲息地!?」

 リィが説明する途中でシンが声を上げる。

 ドラゴンの話は両親から聞いていた。魔族討伐専門機関の傭兵たちでさえ、単独パーティで遭遇した場合は全力で逃げろと指導される獰猛な魔族だ。

 事実、『勇者』と呼ばれる前の父が炎竜に遭遇したときは、大怪我を負わさたと聞いている。

「なんでそんな大事なこと黙ってたんだよ!」

 思わず怒鳴ってしまうと、リィは少しだけ身を縮めた。

「……だって、知ってると、思ったから……」

 要するに、ただのシンの勉強不足だ。

「……ごめん」

 シンは素直に謝り、落ち着くために深呼吸をした。