龍平さんの気配が、ドアの前から消えて。 階段を降りる足音が完全に聞こえなくなったのを確認した私は。 『…ふっ…ううっ…うっ…ひっく…』 もう、我慢することなく思い切り泣いた。 だから、来たくなかった。 だから、会いたくなかった。 この家は、優しさに溢れているから―― 勘違いしてしまいそうになる。